「老いた殺し屋の祈り」マルコ・マルターニ著、飯田亮介訳
オッソは、2メートル近い体格とその無慈悲さから、「熊」と呼ばれてきた男である。組織の殺し屋として、ボスのロッソの片腕として活躍してきたが、しかし60歳を越え、心臓発作で倒れてからは引退を考えはじめている。そんなときに思い出すのは、40年前に生き別れた恋人と幼い娘のことで、一目だけでもいいから会いたいと思うようになる。
で、その昔の恋人と娘がいま住んでいる町を捜しだすのだが、そこに向かう途中の列車で突然男たちに襲われる。ここからは激しいアクションの連続で、休む暇なくたたみかけてくるので、もう一気読みだ。
オッソは世界中の町に隠れ家を持ち、そこには銃や資金が置いてある。なにもなくてもその隠れ家を定期的にまわって、異常がないことを確認しているのだが、列車内で襲われてからその隠れ家の一つに行くと、そこに3人の男たちが待ち構えている。誰にも教えていない隠れ家をどうして突き止めたのか、オッソにはわからない。オッソを邪魔するのは、組織のボスなのか、それとも敵対する組織なのか、暗中模索の戦いは続いていく。はたしてオッソは、恋人と会えるのか――という興味もあるので、ページをどんどんめくっていくのである。
著者はイタリア映画界で活躍している人で、小説は本書が初。テンポのいい展開は、映画界の人ならではだ。アクション小説に飢えている人にはおすすめの小説だ。
(ハーパーコリンズ・ジャパン 1300円)