「増補新版 世界で最も美しい蝶は何か」海野和男著

公開日: 更新日:

 昆虫の活動が本格化し始める季節となった。虫は嫌いでも蝶は好きという人は多い。数いる虫の中でも、蝶は別格の美しさを誇るからだろう。

 地球上にはおよそ1万8000種ほどの蝶がいるという(日本には約250種)。

 昆虫写真家の海野和男氏は、「他に比べるものがないほど美しく、生物の多様性を表す極致」が蝶だという。その美しい蝶の中でもひときわ美しく、「世界三大美蝶」ともいわれ、長年採集家から憧れの的であったのが「ミイロタテハ(アグリアス)」「モルフォチョウ」「トリバネアゲハ」だ。

 ジャングルの奥深くに生息するその3種に、「キシタアゲハ」と我々にも身近な「カラスアゲハ」を加えた5種の大型蝶を中心に、氏が近年の取材で撮影した美麗種の蝶を網羅した豪華図鑑。

 ミイロタテハの仲間は、緑の魔境と呼ばれるアマゾンの奥深くに生息しているため、分布や生態などは今なお神秘のベールに包まれている。その学名からアグリアスと呼ばれることも多いこの蝶こそ、世界で最も美しいとされる。また、ミイロタテハは、同じ種類でもおびただしい変異があり、その多様性の魅力の虜になった人も数知れず。

 その一人で、蝶の収集家として有名なマダム・フルニエが40年近くかけて収集した膨大なコレクションがパリの自然史博物館に収蔵されている。その一部やリオデジャネイロ自然史博物館の標本写真をはじめ、色や模様もさまざまな個体変異のバリエーションを紹介。

 さらに世界で最も輝きが強い蝶「モルフォチョウ」、その名の通り鳥のように大きな翅を持ち、世界で最も豪華な蝶「トリバネアゲハ」など、見ているだけでほれぼれとする約100種類もの蝶が勢ぞろいする。

 蝶の美しさ、魅力を教えてくれる、おすすめ図鑑だ。

(草思社 3850円)

【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    「踊る大捜査線」12年ぶり新作映画に「Dr.コトー診療所」の悲劇再来の予感…《ジャニタレやめて》の声も

    「踊る大捜査線」12年ぶり新作映画に「Dr.コトー診療所」の悲劇再来の予感…《ジャニタレやめて》の声も

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

  4. 4
    阪神岡田監督の気になる進退 来季続投がスジだが…単純にそうはいかない複雑事情

    阪神岡田監督の気になる進退 来季続投がスジだが…単純にそうはいかない複雑事情

  5. 5
    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6
    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

  2. 7
    巨人・岡本和真「急失速の真犯人」…19打席ぶり安打もトンネル脱出の気配いまだ見えず

    巨人・岡本和真「急失速の真犯人」…19打席ぶり安打もトンネル脱出の気配いまだ見えず

  3. 8
    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

  4. 9
    高橋一生「ブラック・ジャック」高視聴率も続編困難か…永尾柚乃“完璧ピノコ”再現に年齢の壁

    高橋一生「ブラック・ジャック」高視聴率も続編困難か…永尾柚乃“完璧ピノコ”再現に年齢の壁

  5. 10
    阪神岡田監督の焦りを盟友・掛布雅之氏がズバリ指摘…状態上がらぬ佐藤輝、大山、ゲラを呼び戻し

    阪神岡田監督の焦りを盟友・掛布雅之氏がズバリ指摘…状態上がらぬ佐藤輝、大山、ゲラを呼び戻し