生き物の不思議を知る本特集

公開日: 更新日:

「京大式 へんな生き物の授業」神川龍馬著

 我々の住んでいる地球には、すごい能力や奇妙な生態の生き物がいっぱいだ。人間に協力するふりをして餌を捕まえるイルカ、酸を出してアスファルトを壊すカタバミ……。生まれ変われるものなら、何になってみたい?



 ウイルスはバイ菌よりもはるかに小さく、研究者が普段使う顕微鏡では見えない。ゲノムは持っているが、ウイルスは自分では増えることはできないため、他の生き物に感染して、その生き物に増やしてもらうしかない。ヒトや動物、植物、微生物に感染し、ウイルスに感染するウイルスもあるが、その全体像はまだ不明である。

 ウイルスの中でも2000年代になって発見されたジャイアント・ウイルスと呼ばれるものは、インフルエンザ・ウイルスの5~10倍もある。それまでウイルスは非常に小さいものと考えられていたので、微生物が通過できない網を通り抜けたものがウイルスだとされてきた。だが、ジャイアント・ウイルスは大きいためにその網を通り抜けられなかったので、なかなか発見されなかったのだ。

 進化し続けるウイルスの世界をのぞく。

(朝日新聞出版 869円)

「そもそも植物とは何か」フロランス・ビュルガ著 田中裕子訳

 ドイツの哲学者、マルティン・ハイデッガーは人間だけが「存在=ダーザイン」であり、動物と植物は「生命」だと考えた。どちらも〈世界〉と言語を持たないからだという。例えば、植物を擬人化または擬動物化して考える見方がある。

 アフリカにいるウシ科の動物クーズーがアカシアの葉を食べると、その周辺にあるアカシアの木はすべて毒性のあるタンニンを分泌するようになる。植物生態学者のジャック・タッサンは、クーズーへの報復とか、アカシアの木が密談をして作戦を立てるという説を否定し、「科学的な識別」によるものだとした。

 オランダの生物学者、フレデリック・ボイテンディクは、動物と人間は周りの世界との関係性を築いて〈存在〉しているが、植物にとってそういう「意味を持つ構造」は存在するのかと疑問を投げかける。

 植物を哲学的に見た異色の一冊。

(河出書房新社 2585円)

「身近な雑草たちの奇跡」森昭彦著

 花を咲かせて種子をつける植物の総数は、最新の推定で約22万~42万種ほどだという。姿そのものを刻々と変えていくため、全体像を掴むのは容易ではないのだ。そんな植物世界の「へんてこな不思議」を紹介する一冊。

 子孫繁栄を願って家紋の一つにもなったカタバミ。3枚のハート形をした葉はかわいらしく、淡いレモン色をした小花も可憐だが、実は相当な破壊力の持ち主でもある。カタバミはシュウ酸やクエン酸など多くの有機酸をこしらえるのを得意とし、根っこから分泌するそれらでアスファルトを舐め分解し、出来た隙間に咲き誇るのだ。

 他にもイヌノフグリの種はアリが運ぶ、ガーデナーの天敵・スズメノカタビラは外的刺激を受けることで細胞の増殖を促すという「ちょっとありえないシステム」を持っている。

 豊富なカラー写真と共に、植物の知られざる生態を紹介。

(SBクリエイティブ 1760円)

「香川照之の昆虫すごいぜ!図鑑 1」カマキリ先生・NHK「昆虫すごいぜ!」制作班著

 トノサマバッタの後ろ足のジャンプ力はすごい。敵から逃げるために、体長の20倍にもなる1メートルの高さまで跳び上がることがある。足の筋肉に蓄えたエネルギーの97%を使えるからだ。人間の場合、使えるのは50%でしかない。しかも、ジャンプしたらじゃまになる後ろ足を折りたたみ、羽を広げて一気に50メートル以上もの距離を跳べる。地面を蹴るときの衝撃をやわらげるために、後ろ足の関節の下は逆方向に曲がるようになっている。トノサマバッタは過密な環境で幼虫時代を過ごすと、普通より羽の長い成虫になって大発生し、農作物を食い荒らすこともある。

 他に、時速60キロで飛べるオニヤンマなど、Eテレの番組でカマキリ先生として昆虫の生態を紹介している香川照之が、昆虫のすごさをアピールする絵本。

(NHK出版 1210円)

「摩訶不思議な生きものたち」岡部聡著

 ブラジルの町、ラグーナでは、ボラが来る季節になると教師、工員などがやってきて、海に腰までつかってイルカを待つ。ボラの群れは見えないが、どこからともなくイルカがやってきて水面に上がると、教師らは一斉に網を投げる。驚いて水面に跳びはねるボラを、イルカがキャッチする。イルカはボラを空中で捕まえるために、人間のいる方に追い込むのだ。(ブラジルのイルカ)

 巨木の林では木と木の間が離れているため、他の木に飛び移ることはできない。サルは枝に巻き付ける長い尻尾を持っているので飛び移ることができるが、そういう操作性の高い尻尾を持っているのはクモザルとホエザルの仲間だけだ。彼らの尻尾の先端の内側には毛がなく、滑り止めになっている。

 他に、空中で産卵する熱帯魚など、一見、不可解に思える生き物の生態を紹介する。

(文藝春秋 1760円)

【連載】ザッツエンターテインメント

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2

    野呂佳代が出るドラマに《ハズレなし》?「エンジェルフライト」古沢良太脚本は“家康”より“アネゴ”がハマる

  3. 3

    岡田有希子さん衝撃の死から38年…所属事務所社長が語っていた「日記風ノートに刻まれた真相」

  4. 4

    「アンメット」のせいで医療ドラマを見る目が厳しい? 二宮和也「ブラックペアン2」も《期待外れ》の声が…

  5. 5

    ロッテ佐々木朗希にまさかの「重症説」…抹消から1カ月音沙汰ナシで飛び交うさまざまな声

  1. 6

    【特別対談】南野陽子×松尾潔(3)亡き岡田有希子との思い出、「秋からも、そばにいて」制作秘話

  2. 7

    「鬼」と化しも憎まれない 村井美樹の生真面目なひたむきさ

  3. 8

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 9

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  5. 10

    松本若菜「西園寺さん」既視感満載でも好評なワケ “フジ月9”目黒蓮と松村北斗《旧ジャニがパパ役》対決の行方