樺沢紫苑(精神科医・作家)

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8月×日 今年は3月から7月までの4ヶ月間に、「精神科医が見つけた3つの幸福」(飛鳥新社)、「行動最適化大全」(KADOKAWA)など、4冊の本を出版し、上半期はかなり充実した時間をすごしました。

 私の場合、本の執筆期間中は、執筆に関連するジャンルの本は、何10冊も読みますが、直接関係のない本は、ほとんど読みません。

 そんなわけで、30冊ほどの本が「積ん読」状態になっていましたので、8月は読めずにたまっていた本を読む月間になっています。

 それらの中で、最も印象に残ったのは、アシュリー・ウィランズ著「TIME SMART(タイム・スマート) お金と時間の科学」(柴田裕之訳 東洋経済新報社 1760円)です。効率的に仕事をこなす。そして、「遊び」の時間を捻出するためには、時間の使い方が、すなわち「時間術」が大切。私も「神・時間術」(大和書房)という本を書いていることもあり、「時間術」関連の本は、ほとんど目を通します。

 本書では、お金を持っていても、時間のない人は「タイム・プア」であり、幸せにはなれない。お金がなくても時間がある人は、精神的にも余裕があるし、その時間の使い方次第で、金銭的に豊かになれる。

「お金」のあるなしが幸せを決めるのではなく、「時間」のあるなしが幸せに大きな影響を与える。そんな内容に、強く共感しました。

 コロナ禍にともなう外出自粛で私たちは、コロナ前と比べて「自由な時間」を手に入れました。つまり、そこに「チャンス」や「幸せ」があるはずなのです。しかし、多くの人はコロナ感染の不安やストレスで、それどころじゃない。

「タイム・リッチ」「タイム・プア」という概念は、そんな私たちに、「時間があることは幸せなんだ」ということを、再認識させてくれます。コロナ禍で文句ばかり言っているのではなく、コロナ禍で得られた時間をどう有効利用するのかで、アフター・コロナで幸せに生きられるかが決まってくる。そんなことを改めて考えさせられる1冊です。

【連載】週間読書日記

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