第6波が来る前に考えたいアフターコロナ本特集

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「コロナ制圧 その先の盛衰」梅屋真一郎著

 2019年末に発生が確認されて以来、地球規模で感染を広げてきた新型コロナウイルス感染症。新たな変異株オミクロンの脅威が迫る今、改めてコロナについて考え、コロナ後の世界を想定しておく必要がありそうだ。



 新型コロナ感染がおさまったら、どんな世界が待っているのか。野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室長を務める著者が想定したアフターコロナの社会を紹介したのが、この本だ。

 著者によれば、コロナショックが終わった途端、直面するのは絶対的人手不足だ。さらに持続不可能な企業が現れる可能性の高い「コロナ対人4業種」として、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業の4業種を列挙している。

 この4業種の危機は地域全体の経済や雇用にも影響が及び、新たな失われた10年を引き起こす可能性が高い。現状維持は最悪にしかならないため、デジタル化、働く女性の環境整備、事業継続困難企業の統廃合と人手のミスマッチの解消、出生率1.8を目指すなどの危機回避のシナリオを示している。

(日経BP 990円)

「新型コロナと向き合う」横倉義武著

 日本医師会会長だった著者が直面した、新型コロナ感染症対策とはどのようなものだったのか。本書は、初動の半年から現在までを振り返りながら、今後の医療政策・医療行政の在り方に提言を示したもの。第1波対応を検証した第1章、第5波を経過した時点で見えた医療体制の問題をまとめた第2章、かかりつけ医の役割から感染症対策を考察した第3章の3章構成だ。

 医療政策は、患者に最善の医療を提供すべきだが、国のルールに縛られて現場が動けなかったり、地域独自の仕組みを作れば後から国の方針が示されすべてが覆ったりと、地域医療の現場は国の政策に翻弄されてきた。著者は結核にかかわった自らの父親の姿も紹介しつつ、コロナを経験した今だからこそ見直したい、かかりつけ医の重要性に光を当てている。

(岩波書店 946円)

「世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ」増田ユリヤ著

 新型コロナウイルス感染症を迎え撃つための武器として、一躍脚光を浴びたmRNAワクチン。このワクチン開発の立役者となったのは、ハンガリー出身の科学者カタリン・カリコ氏だ。本書は、mRNAワクチンの開発を可能にしたカリコ氏の過酷な半生を追ったものだ。

 彼女は研究を続けるために渡米するしか選択肢がなくなった際、出国時に持ち出しを許されたのは日本円にして約2万円でしかなかったため、娘のテディベアに1000ドルを忍ばせ、やっとの思いで移住した。

 その後カリコ氏は、mRNAが引き起こす炎症反応を克服する方法を見いだし、不安定なmRNAを脂の膜で覆って安定させるという手法でワクチン実用化への道を開いた。巻末には、iPS細胞研究財団の山中伸弥教授へのインタビューも収録されている。

(ポプラ社 1045円)

「ポストコロナの文明史像」吉澤五郎著

 国家の枠組みを超えた地球全体を覆う危機として、地球温暖化や資源の枯渇などの問題があるが、今世界中に蔓延する新型コロナウイルス感染症も地球規模の問題といえる。人間の野望と環境破壊の末に警告として登場した感染症を、文明史の視点からどう捉えるか。本書は、新しい世界国家論を提唱したアーノルド・トインビーの思想を軸に、ポストコロナの文明史像を描く。

 たとえばトインビーの思想に強く影響を受けた歴史家として、「疫病と世界史」を著したウィリアム・H・マクニールを紹介。彼は人類を常に感染症に脅かされる弱い存在として定義し、交通網が発達した現代ではその危険性は高くなるばかりであると指摘。今後の展望として、人間による感染症の一方的な制圧ではなく、人間と感染症の共生の道を説いている。

(潮出版社 1100円)

「コロナとワクチンの全貌」小林よしのり、井上正康著

 ワクチン接種が進んだ国で感染者が急増している。ワクチンでコロナに勝つという国の方針は正しいのか。本書は、漫画家の小林よしのり氏と、医学者で大阪市立大学名誉教授の井上正康氏が、コロナの通説に疑問を投げかける対談本だ。

 見過ごせないのが、ワクチンの安全性に関する疑問。ウイルスが作るスパイクタンパクが細胞に結合すると、細胞の自殺反応を引き起こすが、井上氏はワクチンが作るスパイクタンパクでも同様になる可能性を示唆し、腕が痛む副反応が出るのも細胞が攻撃されるためで、これが全身に影響を残すのではと懸念する。

 またワクチンがコロナを排除する中和抗体を作る一方、ウイルスを増殖しやすくする感染増強抗体もでき、前者が効かないと逆に感染も重症化もしやすくなるとも指摘している。

(小学館 902円)

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