「掬えば手には」瀬尾まいこ著
梨木匠は個性といえるようなものを持っていない平凡な大学生だが、中学3年のとき、人の心が読めることに気づいた。中学入学のときから不登校だった三雲さんが登校したとき、10月なのに夏服を着ていることを気にして固まっていた。匠が学ランの下にドラえもんのTシャツを着ているのを見せると、三雲さんはほっとして席に着いたのだ。
匠は現在、物言いがひどく乱暴な店長がいる店でバイトしている。その店に新しく常盤さんという女性が入ったが、なぜか彼女の心は読めない。バイトが休みの日、マラソン大会があるので誘ったら断られてしまった。だが、常盤さんの背中から「気にかけてくれてありがとう」という声が聞こえた。
心につらい秘密を抱えた女性をめぐる心温まる物語。
(講談社 1595円)