「笑いの脳科学」亀山茂樹著
「笑いの脳科学」亀山茂樹著
人が笑うとき脳の中で何が起こっているかは長年、大きな謎であった。本書は、定位温熱凝固術という国産のてんかん外科手技を開発した著者(新潟医療福祉大学客員教授)が、その謎に取り組んだ四半世紀にわたる研究成果をまとめた労作である。
笑いをつくる脳の基本的な仕組みの中核は辺縁脳が担っており、個々人に笑いをつくる神経ネットワークが生まれつき完成しているという仮説がそれだ。
また、笑いの閾値(笑う・笑わないの境目となる値)に個人差があり、“笑い音痴”の人もいることや、生まれたばかりの赤ちゃんが産湯につかってまどろんでいるときに、にんまりすることがあるのは遺伝的なもので、やがて育っていき、母親の声に反応して声を立てて笑うようになるのは、外因的なソーシャルスマイルであるなど、笑いに関する雑学紹介は平易で興味深い。
(考古堂 1540円)