岩井三四二(作家)

公開日: 更新日:

5月×日 某所書店併設の喫茶店で某社編集部と打ち合わせ。1年前はZOOMでやりとりしていたのを思えば、日常がもどりつつあると感じる。といってもマスクははずせず、暑苦しさはつづく。帰りがけにその書店の新刊コーナーで目を引いた「レオ・ブルース短編全集」(扶桑社 1320円)を購入。短編というより1話数ページの掌編が多い。またガチの謎解きというよりウィットを楽しむタイプなので、夜寝る前の読書に好適。

5月×日 書店にならぶ新刊も、時節を反映するものが目につく。「ロシア軍、北海道に侵攻」という赤い帯につられ、砂川文次著「小隊」(文藝春秋 836円)を手にとる。さすがに元自衛官の著作だけに、戦場の描写が濃密。リアリティーに富んでいるので、読んでいて息苦しくなる。夜寝る前の読書には向かない。昼間に心して読むべし。刊行時期がなんともタイムリーだが、文庫本はだいたい半年前には刊行時期が決まるので、この本も去年の冬ぐらいには刊行が決まっていたのではないか。ロシア侵攻とは関係ないと思う。

 かくいう私も、日露戦争を舞台にロシアの南進と当時の最新技術だった無線機開発を描いた「『タ』は夜明けの空を飛んだ」(集英社 990円)という本を刊行したところ、その1週間後にロシアのウクライナ侵攻がはじまり、びっくりするという経験をした。これも刊行時期は去年の夏に決まっていたので、ただの偶然なのだが。

6月×日 次作の資料としてエルンスト・ウーデット著「ドイツ最強撃墜王ウーデット自伝」(潮書房光人新社 1012円)を読む。1903年に発明された飛行機は、1914年からの第1次世界大戦で兵器として大量に使用され、多くの撃墜王を生み出した。そしてこのころから戦争は何十、何百万という犠牲者を出すようになってきた。だから第3次世界大戦なんて冗談じゃない。いまはロシアの侵攻が早く失敗に終わることを祈るのみ。

【連載】週間読書日記

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  4. 4

    永野芽郁は大河とラジオは先手を打つように辞退したが…今のところ「謹慎」の発表がない理由

  5. 5

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  1. 6

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  2. 7

    威圧的指導に選手反発、脱走者まで…新体操強化本部長パワハラ指導の根源はロシア依存

  3. 8

    ガーシー氏“暴露”…元アイドルらが王族らに買われる闇オーディション「サウジ案件」を業界人語る

  4. 9

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  5. 10

    内野聖陽が見せる父親の背中…15年ぶり主演ドラマ「PJ」は《パワハラ》《愛情》《ホームドラマ》の「ちゃんぽん」だ