「地球グルメ大図鑑」セシリー・ウォン、ディラン・スラス著、ナショナルジオグラフィック編
「地球グルメ大図鑑」セシリー・ウォン、ディラン・スラス著、ナショナルジオグラフィック編
小学生の頃から、本屋さんでの慎重な姿勢は変わらない。大人になったら金に糸目をつけず欲しい本をどんどん買うぞと思っていたのに、どうしたことか。いつまでも貧乏でケチケチと本を選ぶ人生だ。限られた資金をつまらない本に投じることのないよう、ためつすがめつ。一度手に取ってまた棚に戻したり、既読本とのかぶりを考慮したり。本屋さんでの独り相撲は果てしなく続き、つい長居してしまう。
ただ、年に2回くらい手にとって5秒でレジに持っていく、往年の琴錦ばりの速攻相撲を決めるときがある。この本がそうだった。世界各地の珍しい食材や料理の逸話がぎっしり詰め込まれた一冊。ふんだんに添えられた写真や絵が美しい。「図鑑」だからそこそこの値ではあるが、この情報量とワクワク感ならば決して高くはない! とわたしにしては珍しく即決したのだ。
これを毎日パラパラめくって「つまみ食い」している。たとえば「世界のおこげ」を網羅したページ。そうかそうか、プエルトリコ人もイラン人もお米を炊く際に鍋に張り付くおこげを愛しているのか。あるいは「本国から最も遠いチャイニーズレストラン」特集。ノルウェーの北極圏にある中華料理店の屋号、標高4000メートルのペルーの鉱山都市で食べられる春巻き……。こんなにディープなネタばかり、一体どうやって集めたのだろうと疑問だったが、アメリカの旅行サイトに世界中のユーザーから寄せられた情報がソースだと知って納得した。
いい本を買ったときはしばらく自画自賛することが大切だ。するとまた本が欲しくなる。
(日経ナショナル ジオグラフィック4290円)