「葬る」上野歩著
「葬る」上野歩著
2003年、麻衣が鎌倉にある実家の石材屋で働き始めて3年が経った。扱う主な商品は墓石だ。業界は、定年を迎える団塊世代の生前墓の需要が高まり、墓バブルの渦中にあった。
しかし、父親の隆一は高価な庵治石(あじいし)で墓石をつくりたいとわざわざ東京から訪ねて来た客の依頼にも気のない返事をして、何を考えているのか分からない。元従業員に取引先の寺の半分を持っていかれても父は何も動こうとしない。
麻衣は新しくできた民間霊園にブースを構え、墓地見学に来た人に営業をする。さまざまな客の要望に応えながら、墓石を売る麻衣だが、時代の変化で墓や葬儀に関する人々の考え方が大きく変わっていくのを肌で感じる。
墓とは何かを模索する麻衣を主人公にしたお仕事小説。
(光文社 748円)