「ルポ 無縁遺骨」森下香枝著
「ルポ 無縁遺骨」森下香枝著
2018年4月から21年10月までの3年半の間、引き取り手のない死者の数は約10万5000人にも上った。身寄りがないために死亡届も出せず、すぐに火葬もできず、最終的には役所のキャビネットや無縁の納骨堂をさまよう。本書は、これら多くの無縁遺骨を前に我々はどうするべきなのかを問う衝撃の書だ。
著者は、女優の島田陽子さんが亡くなった後に遺体の引き取り手がなく、自治体により荼毘に付されたことを知りショックを受けた。さらに皇室ジャーナリストの渡辺みどりさんは、遺言を書き、死後は献体を望んで登録も済ませていたが、自宅で倒れた状態で発見されたために警察が死因を調べることになり、望むような献体はできなかった。子どもや家族などの身寄りがいない人はもちろんだが、家族がいても最後に死ぬ人は無縁遺骨になり、たとえ入念に準備をしても思ったように葬られない可能性もある。
地域格差や、身寄りのない者が互いを弔い合う新たな弔いの形や墓じまいの増加など、終活現場のリアルが伝わってくる。誰もが無縁遺骨になる可能性がある今の日本の実態をルポルタージュする。
(朝日新聞出版 1760円)