「自民党という絶望」石破茂 他著/宝島新書
「自民党という絶望」石破茂 他著/宝島新書
自民党の議員やOBから軒並み対談を断られている中で、石破茂だけは応じてくれた。それは「ZAITEN」(3月号)に「佐高信の賛否両論」として載っている。
そこで私は彼に「石破さんを支持している人は自民党内にはあまりいないわけでしょう?」と尋ね、「国会議員にはあまりおられないかと」と苦笑するのに「だったらそれを頼みにしてもしょうがないじゃないですか」と迫って決起を促した。見出しは〈石破茂は田中角栄の“感覚”を受け継いで決起せよ〉である。
この本は石破に始まって亀井静香で終わるが、亀井は「今、俺は原発に反対している。宿敵のはずの純ちゃん(小泉純一郎)と、その部分では共闘してるってわけだ」と発言している。つまり、原発に限っても自民党と世間(社会)は乖離しているわけで、自民党の「常識」は社会の「非常識」なのである。首相候補1番人気の石破が自民党内では不人気なのもそこに理由がある。
田中角栄に傾倒するところからスタートした石破は、田中が「あの戦争に行ったやつがこの国の中心にいる間は、この国は大丈夫だ」と言っていた、と語る。しかし、この本の中で古谷経衡が指摘するように、あの戦争を起こした岸信介が首相になったのは「ヒトラー内閣で軍需大臣をやった人間が戦後の西ドイツで政治家をやる」のと同じだった。この国はそれを許してしまったわけである。そして岸の孫の安倍晋三が率いた安倍派の裏金問題がいま明るみに出ている。旧統一教会の問題とこれはつながっているわけで、自民党を解体しなければ闇は果てしなく続いていくだろう。スキャンダルと政策の過ちは直結しているのである。
食の安全保障を完全に無視している日本は「真っ先に飢える」と嘆く鈴木宣弘は、アメリカが余剰生産物として大量に抱えていた小麦や大豆やとうもろこしを日本に押しつけたと批判する。「実質的に関税を撤廃させられたことで、日本において、この3品目の伝統的生産はほぼ壊滅に追い込まれ」たのである。鈴木によれば、キューバの革命家、ホセ・マルティは「食料を自給できない人たちは奴隷である」と指摘したとか。
特別寄稿を含む10人の論者によるこの本はちょっとまとまりに欠けるので補助テキストとして、平野貞夫と私の「自民党という病」(平凡社新書)を挙げておきたい。 ★★半(選者・佐高信)