「みたてのくみたて」田中達也著
「みたてのくみたて」田中達也著
著者は、身の回りの日用品を別の何かに「見立て」、まったく異なる風景をつくり出すミニチュア写真家・見立て作家。例えば、ブロッコリーの小房を並べて森に「見立て」、その下でピクニックをする家族とか、生卵を無人島に見立てる(表紙)など。作品を発表するSNSのフォロワー数は380万人を超えるという。
13年間、これまでに5000点を超える作品を発表してきたが、そのアイデアは尽きるどころか日々増えているそうだ。
本書は、自らの作品作りの一端を明かしながら、その発想の秘訣を教えてくれる指南書。
例えば、どこにでもある1本の鉛筆を、あなただったらどう見立てるか。
まずは色や形、素材、使い道など鉛筆が持つ特徴について考えてみる。続いて、それと同じ特徴をもつ別のものが身の回りにないか探してみる。
著者は、色鉛筆の青と黄色を並べたケースをプールに見立てたり(色から発想)、鉛筆をダブルクリップに挟んで天体望遠鏡に見立てたり(形から発想)、鉛筆と三角定規を組み合わせ飛行機に見立てたり(スケールを変える)、積み上げたコピー用紙をビルに、そこに突き刺さった鉛筆をミサイルに見立ててみたり(世界共通の出来事から発想する)など自在に作品を生み出していく。
多くの作品を紹介しながら、そうした自らの発想のテクニックを解説し、感覚に頼らずアイデアを論理的に導くための方法を教えてくれる。
日常をいつもと違った新鮮な視線で見ることができたり、今あるものを組み合わせて新しい価値を作り出せたり、人に共感してもらえるアイデアを生み出せるなど。見立ての技術はビジネスにも幅広く応用が可能。
何よりも、著者の作品を楽しめ、その発想法までを学べる一石二鳥本。 (ダイヤモンド社 2090円)