「大江戸24時浮世絵で庶民ライフを物見遊山」堀口茉純著
「大江戸24時浮世絵で庶民ライフを物見遊山」堀口茉純著
蔦重ゆかりの絵師らの膨大な作品の中から、江戸庶民の日々の暮らしぶりが分かる浮世絵を手掛かりにして、誌面で江戸っ子の一日を追体験する。
寅の刻(暁7つ.7つ半=午前3~5時ごろ)。歌川国安の「日本橋魚市繁栄図」には、まだ夜明け前だというのに大勢の人でごった返す魚河岸の様子が描かれる。遠くに見える日本橋の上も人だらけだ。往来には魚を運ぶふんどし姿の男たちや見物人の武士、通りには魚を商う小屋が並ぶ。
そんな浮世絵を手掛かりに、「イナセ」の語源となった威勢のいい男たちの髪形や、握り寿司の値段などの江戸事情が解説される。
以降、時間の経過とともに、朝の身だしなみに産毛を剃る女性(「芝神明前」歌川豊国)、「明け六つ」(午前6時ごろ)の鐘を合図に町の出入り口の木戸が開き、長屋にモノを売りに来た行商人たち(「卯の花月」)などに描かれた情景を解説。
さらに鳶や大工が働く様子や、床屋や居酒屋事情や歌舞伎の興行、そして終夜営業の吉原の遊女たちの仕事ぶりまで。
江戸にまつわるウンチクも学べる面白本。
(KADOKAWA 1925円)