「秋葉断層」佐々木譲著
「秋葉断層」佐々木譲著
警視庁捜査1課特命捜査対策室の刑事・水戸部のもとに、27年前のひき逃げの未解決事件が持ち込まれたところから物語は始まる。ひき逃げなら本来交通捜査課の仕事だが、被害者の姉から強盗事件だったのではないかという相談があったというのだ。
被害者は、秋葉原で有名な同族経営の電器店の常務・江間和則。相談に来た和則の姉・美知子は、事故当時弟が使っていた弟の名前入りの腕時計が知り合いの質屋に持ち込まれたことを受けて、ひき逃げ犯と関係があるのではと考えて連絡をしたという。当時、この時計のほかに持っていたはずのバッグも見当たらなかったため、強盗に襲われた後にひき逃げされたのではないかと疑ったのだ。水戸部は、事件があった万世橋署交通課の巡査部長・柿本と共に、改めて被害者周辺を探り始めるのだが……。
「地層捜査」「代官山コールドケース」に続く、特命捜査対策室シリーズの最新作。ひき逃げなのか、それとも何かの事件が絡んでいるのか。捜査で息の合わなさが目立った柿本とさまざまな可能性を探るなかで、たどり着いた予想外の真相とその結末に驚かされる。
(文藝春秋 1980円)