地元名産を使った母の手作り「ちくわカレー」が料理の原点
プロの料理人並みの腕前を持つ松平だが、原点となっているのが母・いつさんの手料理だ。
中でもカレーは故郷を思い出す味となっている。松平は気が向くと、特製カレーをつくって記者たちに振る舞ったりもするが、レシピは舌が覚えている母の味だという。
カレー好きが高じて8年前に「マツケンカレー」というレトルトのカレーまで発売した。懐かしい昭和の時代のカレーで、じゃがいも、にんじんといった具は大きめ、牛肉の入った中辛味だ。
だが、これは本当の母の味ではない。
「母の味と言えば、本当はちくわが入ったカレーです。東三河の豊橋は、カレーに入れる具は牛肉ではなく豚肉でしたが、貧しかった我が家では豚肉の代わりに、地元のちくわが入っていた。当時は周囲もみんな貧乏でしたが、豚肉が入るのは給料日くらいです。カレーのルーは、東京ではあまり見かけないけど、愛知県民ならお馴染みのオリエンタルの粉末カレー。黄色いカレーです」
オリエンタル(本社・愛知県稲沢市)の「マースカレー」は、松平が9歳だった1962(昭和37)年から販売されているロングセラー。一方、豊橋のちくわは終戦直後、戦災で焼け野原となった豊橋市民の貴重な食料となった。1964(昭和39)年に東海道新幹線が開通すると、「こだま」の停車駅になった豊橋駅で地元企業の「ヤマサちくわ」がホームで立ち売り販売。今では豊橋の名物とまで言われるようになっている。