「早春」サラリーマンの悲哀で味つけしたある夫婦の危機

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 山村、笠、東野ら芸達者3人の語り口が実にいい。知性派俳優・山村の弁舌は特に説得力がある。敗戦から11年。戦争を生き抜いた男たちは虚無感の中で人生に倦(う)んでいたのかもしれない。

 本作の6年後に植木等の「ニッポン無責任時代」がヒットし、日本は高度経済成長に突入、猛烈サラリーマンが出現した。その勢いで80年代に団塊世代がバブルを引き起こし、バブル崩壊によって大リストラの渦に巻き込まれ、またも悲哀を噛みしめることとなった。本作は戦後の勤め人の苦悩の原点。公開から63年になるが、人はいまだにサラリーマンの悲哀から逃れられないようだ。

(森田健司)

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