志村けんさん 泥酔記者に愛の一喝「話をちゃんと聞け!」
新型コロナウイルス肺炎により70歳で急逝した志村けんさんは、日刊ゲンダイにも「令和特別号座談会」(昨年5月1日発行)と「人生のトリセツ」という企画で「志村魂」のメンバーの方と一緒にご登場いただいた。
普段はシャイで、決して多くを語るほうではなかった。取材の中でも、お笑いや人生について“上から目線”で語ることをことのほか嫌った。「オレごときがエラソーに語ることじゃない」といつも言っていた。
挨拶や時間を守ることには厳しかった。10年以上前の話になるが、当時勤めていた出版社の月刊誌で志村さんの対談連載の編集を担当させていただいたことがあった。毎号、ゲストを招くのだが「大御所は最後に現場入りする」という芸能界の慣例があるなか、志村さんは集合時間の30分前には取材現場に現れるのが常だった。それでスタッフはいつも1時間前から待機していたのだが、1度だけ集合時間よりかなり遅れて現場入りした若い女性ゲストがいた。
そのタレントに対する全スタッフのいら立ちがピークに達し最悪の空気となる中、恐縮して涙目になって大声で謝りながらそのゲストが入ってきた。志村さんの表情が一瞬スッと変わったのが分かった。この時ばかりは肝を冷やした。しかしいざ対談が始まってみると、予想に反して会話は大いに盛り上がり、それまでで一番面白いものとなった。志村さんはいつも周囲のふるまいを冷静に観察していて、周囲に気付かれないようさりげない気遣いをされる方だった。