夏木ゆたかさん語る尾車親方との2ショット 笑顔と不屈と

公開日: 更新日:

夏木ゆたかさん(71歳・タレント、パーソナリティー)

 歌手出身で、ワイドショーの司会などでもお馴染みだった夏木ゆたかさんにとって、「思い出の一枚」はがぶり寄りの苦労人として知られた尾車親方(元大関琴風)とのプライベートショット……。

 歌手デビューしたのが1969年、20歳の時です。デビュー曲は売れず、70年に太田幸司投手率いる三沢高校と松山商業の甲子園の熱闘の2試合を歌にしようという話が持ち上がって、「甲子園の星 紅燃える」が2枚目。これは青森ではいいところまでいきました。でも、誤算は太田さんが阪神ではなく近鉄に入団して「日生の星」になっちゃったことです。

 諦めて東京に戻り、銀座三越にお願いして、2階や屋上で新人歌手がやるキャンペーンの司会の仕事を7年間やらせてもらいました。毎日仕事があるし、僕としては希望に燃えていました。

 転機はペギー葉山さんが私を見いだしてくれたこと。仕事をいただけて、当時大人気だった南沙織さんの専属司会もやったりしました。

 その頃はラジオの仕事があって、マネジャーと一緒にテレビに売り込んだりして、運よくリポーターの登竜門といわれた朝のワイドショーの「TV3面記事」というコーナーの準レギュラーになることができました。ただ、もともとが歌手なので、事件取材で暗い気分になり、1年半でやめて、TBSの「ぎんざNOW!」の後番組「アップルシティ500」という番組に移りました。

 写真はその時代のものです。「アップルシティ500」が始まってすぐ、40年近く前の82年だと思います。雑誌の仕事で佐渡ケ嶽部屋の琴風さんの取材をすることになったんです。

 部屋に行ったら、親方の琴桜さん(佐渡ケ嶽親方)がなぜか「早く、ふんどしつけて」と言うので「取材するだけですよ」と言ったら、「もう用意しているからダメだよ」とせかされて。そう言われたら仕方がない。ふんどしをつけて琴風さんと胸を合わせたのですが、私は痩せていて骨付きカルビみたいだから、琴風さんや周りの人がゲラゲラ笑っていました。

 胸を借りた時は「頭突きだ」とぶつかった。そうしたら「だめだよ、それじゃ、首が折れちゃうよ。頭突きは額からぶつかるんだ」と言われました。琴風さんの胸が硬いなと思ったのを覚えています。

 稽古が終わってやっとちゃんこかと思ったら、その前に「風呂だ」と言われ、親方に言われるまま背中を流しました。

 ふんどし姿の写真は出版社からいただきました。ただそれが手元になくて。残っているのはプライベートで撮ったと思われるこの写真です。一緒にちゃんこを食べてから琴風さんの部屋で話を聞いたのですが、その時に撮ったものだと思います。

「相撲をとれるだけでいい」

 琴風さんは184センチ、僕は180センチ。だけど、体重は173キロで骨付きカルビの僕は60キロだから、琴風さんとは体格が違う。それでこんなふうに写ったんでしょうね。

 琴風さんは関脇までいきながら、左膝内側側副靱帯断裂の大ケガで幕下ドン尻まで落ち、復帰は難しいといわれても、ケガを克服して関脇に復帰しました。お会いしたのはその頃と思っていたのですが、年代を考えるとそうじゃないですね。

 琴風さんは再び古傷や半月板のケガをして膝にメスを入れ、それでもメゲずに関脇に復帰し、大関に昇進したのですが、これはその後の写真です。「うちの大関は苦労した人だから、よくお願いしたらいろいろ話をしてくれるよ」と部屋の方に言われ、それで不屈の精神で大関まで上り詰めた琴風関を取材しようということだったと思います。

 その時は幕下まで落ちた時はどう思ったかを聞きました。これには「あんな大ケガをして、相撲をとれるだけでいいよ」とニコニコしながら語ってくれたのを覚えています。誰も幕下ドン尻から大関まで上がってくるとは思っていなかったはずです。すごいな、みんなに好かれているんだろうなと思いました。

 大関になってから覚えているのは、他の大関が盛り場を歩いているという話が週刊誌に載った時です。「天下の大関がこれじゃダメだ」と語ったことがあります。「天下の大関」というところに自負心があるんだな、そういう言葉が出るのは責任感をもってやっているからだろうなと感じました。そんな琴風さんだから敵をつくらず、認められ、協会ナンバー2の事業部長というすごい地位におられるんだな、と。

 一時、ケガで大病された時もありますが、お弟子さんたちが「親方の分まで頑張る」と語った感動的な話もありました。

 その後お会いしたことはなかったのですが、2年前ですかね、文化放送の番組に出るために琴風さんが見えたんです。僕からナンバー2になられた方に挨拶に行くのは失礼だと思っていたら、親方の方からわざわざ「夏木さん、いますか」とお越しくださった。その時は昔のことなのによく覚えていらっしゃる。本当に律義な方なんだなと思いました。

 今は新型コロナで僕の番組でも歌手の方には電話で出演していただいています。いつもはスタジオに来て記念に写真を撮ってアップしたりしていますが、今はそれができません。早く元に戻ってほしいものですね。

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)

♬レギュラー♪ 1999年にスタートしたラジオ日本「夏木ゆたかのホッと歌謡曲」(15時~17時40分)は放送5000回を超える。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」