ミュージカル「ミス・サイゴン」で頭をよぎる ベトナム戦争での虐殺と慰安婦問題
今月、帝国劇場でミュージカル「ミス・サイゴン」が開幕する。“世界4大ミュージカル”のひとつといわれ、日本での初演は1992年。当時、まだアイドルだった本田美奈子.さん(享年38)が初代ヒロインを務め、大きな話題となった。
「ミス・サイゴン」はベトナム戦争末期のサイゴンを舞台に、現地の少女キムと米兵との愛を描いているが、それが残酷にも引き裂かれる悲劇の物語。ブイ・ドイ(米兵とベトナム人女性との間に生まれた子)の存在もクローズアップされている。
韓国での「ミス・サイゴン」初演は2006年のこと。韓国人の「一番見たいミュージカル」の1位に輝いていた作品だけに、注目度の高さは日本以上だったといえる。私はこの作品が好きで、2010年に初めて韓国版「ミス・サイゴン」をソウルで観劇した。セリフは韓国語だが楽曲は同じ。ストーリーは知っていたので、言葉の壁はさほど感じなかった。
観劇であれほど号泣したのは後にも先にもあれ一度きりだ。幼い息子を思うヒロインの姿にこれ以上ないほどの深い愛情と強い決意を感じ、心が震えた。大量の涙はハンカチで拭いきれず、首まで濡れる始末だった。私だけでなく、隣の席にいた知らない韓国人女性も激しく泣いていた。最前列の席だったので、カーテンコールで出てきた主演俳優が私たちの姿を見てギョッとしたほどだ。