計9時間!菊之助の新作歌舞伎「ファイナルファンタジーX」はあまりに長い
歌舞伎とは何かを考えさせるが…
歌舞伎と銘打っているが、歌舞伎らしさは、ほとんど感じられない。人物が登場するときなどで七五調のセリフはあるが、基本は現代語で進む。
格闘シーンになると、歌舞伎風の立ち回りとなる。歌舞伎っぽいのはその程度だ。もちろん、女性の役も歌舞伎役者が女形として演じている。
歌舞伎を見たことのないゲームのファンが見て、「歌舞伎は面白いな。来月は歌舞伎座に行ってみよう」と思うかというと、そういう人はゼロではないかもしれないが、ほとんどいないだろう。
その逆に、ゲームをやらない人が、これをきっかけに『ファイナルファンタジー』をやってみようと思うかというと、少なくとも私は、やろうとは思わなかった。
こういう新作で考えてしまうのは、「歌舞伎とは何か」ということだ。名門・尾上菊五郎家の御曹司たる菊之助が「新作歌舞伎」と銘打って上演するのだから、「歌舞伎」なのだと言い切ることはできるが、それを納得する人がどれくらいいるのだろう。
それは市川猿之助(47)の『ワンピース』でも感じたことだ。しかし、こういうのは答えの出ない問題なので、踏み込みはしない。
市川團十郎(45)も、海老蔵時代に新作をつくっていたが、批判されまくっていた。團十郎の新作は、従来の歌舞伎の題材から逸脱することはなかった。菊之助のほうが、かなり型破りなのである。それでいて、團十郎のようなバッシングを浴びないのは、何が違うのだろうか。