夏川りみさん『涙そうそう』との出会い BEGINの歌をテレビで偶然「あの時、飲みに出かけてたら…」

公開日: 更新日:

Kiroroが出てきた頃に再チャレンジを思い立ち…

 当時は、沖縄出身のKiroroが出てきた頃。曲を聴いて、「高校生でこんな曲を作っているんだ、すごいなあ」と思いました。そういうことがきっかけになって、このままここで歌っているのもいいけど、もう一回チャレンジしてみようと考えるようになった。

 それでダメ元で前にいた事務所の社長に連絡してみました。社長に「今、何やってんの?」と聞かれ、「スナックで歌ってます」と答えたら、「もう一回チャレンジしてみる?」と言われました。社長は声をかけても、引き取ってくれるところがないなら諦めればいいと。

 ある日、赤坂にあるお店に関係者に集まっていただいて、私はそこで森昌子さんの歌や演歌、歌謡曲を何曲か歌い、聴いてもらいました。そんな機会から2、3カ月経っても連絡がないから、もうダメなんだろうなと思っていたら、ビクターさんが拾ってくれるという。私はそれを聞いて、すぐに上京しました。

 それで夏川りみとして再デビューが決まり、「夕映えにゆれて」(99年)をリリースしました。

 もっとも、ヒットしたわけではありません。私が「涙そうそう」に出合うのは沖縄サミットが開かれた2000年のことです。この年にBEGINがアルバム「ビギンの島唄~オモトタケオ~」をリリースしたのですが、サミットの時に何げなくテレビをつけたら、BEGINが歌っていた。その時に何曲か歌った中で1曲だけ聴いたことがない歌があった。それが「涙そうそう」です。

 聴いた瞬間に、「ワー、すごいな、いい曲だな」と思いました。その瞬間から頭の中で曲が繰り返し繰り返し流れる感じで、私はこれを歌いたいと猛烈に思ったんです。なので、もしあの時、誰かに誘われて飲みに行ったりして、テレビをつけていなかったら「涙そうそう」には出合わなかったと思っています。

 BEGINは私の姉と同級生で、学生の時からバンドを組んで歌っていたので、よく知っていました。東京に出てきた時は居酒屋で飲んだりもしました。たまたま、BEGINが渋谷でライブをやっているというので出かけて行って、「『涙そうそう』、私も歌いたいな」と話をしました。

 BEGINは私がどうしても歌いたいというので新曲を用意してくれたのですが、私が「涙そうそう」にこだわり、歌うことが実現しました。レコーディングで私は、幸せいっぱいで「涙そうそう」を歌いました。すると、BEGINに「これってどういう曲か知ってる?」と聞かれた。そして、森山良子さんが亡くなったお兄さんのことを書いた歌詞だと教えてくれて。

 その時はさすがに私が歌ってはいけない曲だと思いましたね。でも、どうしても歌いたい。それでちょっと待ってもらって、歌詞を読み込み、再度レコーディング。「その歌い方なら聴く人に気持ちが届くよ」と認めてもらい、発売にこぎつけました。

 できあがったCDは森山さんがやっていたコンサート会場にお持ちして、最初に聴いてもらいました。「できたてホヤホヤです」とお渡ししたら、森山さんは「いっぱい歌ってね」と言ってくださって。よかったあと安心しました。

 紅白に出たのは発売の翌年です。この時はBEGINとDA PUMP安室奈美恵さんと私の4組が沖縄から出場しました。出場が決まったと連絡があったのは、事務所の社長とレコード会社から帰る途中の車中でした。社長の電話が鳴って「紅白が決まりました。おめでとうございます」という声が漏れてきた。社長は言葉を詰まらせ、泣いてましたね。私も「ああ、これでやっと夢がかなった」と思うと本当にうれしかった。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    上智大は合格者の最大40%も…2021年から急増した「補欠合格」の現状

  2. 2

    慶応幼稚舎の願書備考欄に「親族が出身者」と書くメリットは? 縁故入学が横行していた過去の例

  3. 3

    「NHKの顔」だった元アナ川端義明さんは退職後、いくつもの不幸を乗り越えていた

  4. 4

    赤西仁と田口淳之介が始動…解散した「KAT-TUN」元メンバーたちのその後

  5. 5

    永野芽郁の「文春」不倫報道に噛みついたGACKTさんは、週刊誌の何たるかがわかっていない

  1. 6

    人間の脳内のマイクロプラスチック量は「使い捨てスプーン」サイズ…8年前より1.5倍に増えていた

  2. 7

    「ニュース7」畠山衣美アナに既婚者"略奪不倫"報道…NHKはなぜ不倫スキャンダルが多いのか

  3. 8

    やなせたかし氏が「アンパンマン」で残した“遺産400億円”の行方

  4. 9

    トランプ大統領が大慌て…米国債の「金利急上昇」は何が大問題だったのか?

  5. 10

    小田和正「77歳の現役力」の凄み…現役最年長アーティストが守り続ける“プロ意識”