昭和の名優の一声で気づかされた 石倉三郎「辛抱」の果ての円熟味
坂本九からは人としての行儀からタレントとしての心得まですべてを教わった。特に強く言われたのは「照れを克服しろ」ということだった。
「やっぱシャイなもんですからね。どうしてもこう、普通の顔しててもブスッとしてるように見えるらしいんですよ。それはおまえ、損だから、もっとにこやかにしろ」(BS12トゥエルビ「船越英一郎の昭和再生ファクトリー」24年12月12日)と。
専属司会の契約が切れると、坂本九から自分のマネジャーになってほしいと言われるが、役者への未練から断った。そして、レオナルド熊とコント・レオナルドを結成し、コメディアンとしてブレーク。解散すると、俳優としての活動を再開した。
石倉は撮影の待ち時間が長くイライラしていたことがあった。すると「俺なんて80年待ってるよ」と声をかけられた。声の主は名優・藤原釜足だった。芸人から俳優活動を再開して気を張っていた石倉は、その言葉で力が抜けた気がしたという。
「芸人も役者も結局一緒なんだよ。売れるチャンスを待ってんのも役を待つのもおんなじことだって!」(「藝人春秋」=前出)
長い辛抱の果てに“味”が熟成されるのだ。