著者のコラム一覧
青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

怒りやすい人は心筋梗塞を発症しやすい?

公開日: 更新日:

 以前この連載で、「心筋梗塞と怒り」の関連について検討された論文を紹介したことがあります。強い怒りの感情を持つと、心筋梗塞発症リスクを増加させるという結果でした。一方、弱い怒りの感情ではリスクの増加は示されなかったことから、「心筋梗塞予防には感情のコントロールが大切かもしれない」とその時は結論しました。

 この論文で検討されていた被験者は300人程度とかなり小規模でしたが、米国心臓病学会誌電子版(2016年10月10日付)では、怒りの感情と心筋梗塞に関する大規模観察研究の論文が掲載されました。

 この論文報告は、52カ国における1万2461人の心筋梗塞発症者(平均58.1歳)を対象に解析したかなり規模の大きい研究です。アンケート調査により、心筋梗塞発症の1時間前における身体活動の状態や、怒りの感情について情報を収集しました。なお、結果に影響を与え得る、年齢や性別、喫煙状況、糖尿病や高血圧などの危険因子について、統計的に補正して解析しています。

 心筋梗塞発症1時間以内において、14.4%にあたる1752人で怒りの感情を有しており、また13.6%にあたる1650人で激しい身体活動がありました。心筋梗塞の発症リスクは、怒りの感情があると2.44倍、激しい身体活動があると2.31倍、統計的にも有意に増加しています。また、激しい身体活動と怒りが同時にあると、心筋梗塞のリスク上昇は約3倍にまで上がることが示されています。

 怒りの感情が心筋梗塞リスクを上昇させるだけでなく、それに加えて激しい身体活動があると、さらにリスクが上昇するという結果でした。心筋梗塞予防には、やはり感情のコントロール、そして運動量も重要と言えるかも知れません。

【連載】役に立つオモシロ医学論文

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ソフトB悪夢の本拠地3連敗「2つの敗因」…26イニング連続無得点よりも深刻なチーム事情

  2. 2

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  3. 3

    石井琢朗コーチが三浦監督との《関係悪化説》を払拭、「ピエロ」を演じたCS突破の夜

  4. 4

    3人の婚外子…菊川怜の夫・穐田誉輝氏“暴かれたスネの傷”

  5. 5

    ソフトバンク 投手陣「夏バテ」でポストシーズンに一抹の不安…元凶はデータ至上主義のフロントか

  1. 6

    橋本環奈のパワハラ疑惑のこと? 嵐・二宮和也の正月番組のワンシーンが視聴者の間で物議

  2. 7

    橋本環奈《山本舞香と友達の意味がわかった》 大御所芸人に指摘されていたヤンキー的素地

  3. 8

    大谷翔平は来季副収入100億円ガッポリ、ド軍もホクホク! 悲願の世界一で証明した圧倒的経済効果

  4. 9

    夏菜の二の舞か?パワハラ疑惑&キス写真で橋本環奈に試練…“酒浸り”イメージもそっくり

  5. 10

    いまや大谷ドジャースこそ「悪の帝国」だ…カネ&人気&裏技フル活用でタンパリング疑惑まで