ニボルマブは効果と副作用の予測がまだ分かっていない
当初、ニボルマブは患者数の少ない悪性黒色腫に適用とされ、薬剤開発費なども加味して1人当たり1年間で約3500万円、米国の2倍、英国の4倍という値段がついたようです。そして、それがそのまま患者数の多い肺がんに適用が拡大されたのです。「こんな高額な薬が次々と出たら医療保険財政を圧迫し、国の医療制度を滅ぼすのではないか?」とまで言われました。これまで、いろいろな議論が報道されていましたが、この2月にようやく臨時措置として薬価が50%切り下げとなっています。
従来の抗がん剤は、がん細胞の核、DNA、RNAに直接作用し、がん細胞を死滅させるもので、これが正常細胞まで叩いてしまうため副作用が表れます。それに対し、「分子標的薬」はがん細胞の核を直接叩くのではなく、がん細胞の増殖を抑える薬剤として開発されました。そのため、「がん細胞にだけ働くだろうから、正常細胞には影響は少ない」と考えられましたが、実際には思わぬ副作用も見られました。
そして、ニボルマブは、これまでのがんに対する薬とは全く違う「免疫チェックポイント阻害薬」というもので、正常細胞に働く薬です。そのことから、副作用が心配されており、「緊急時に対応できる医療施設で、がん化学療法の経験豊富な医師のもとで行われることが必要である」とされています。