孤独<4>「社会脳」の発達障害で「孤独脳」が完成する
■大脳皮質の神経密度が減る
生まれたばかりのマウスを集団内で育てると、社会性に関係する神経細胞がよく育ちます。ところが1匹だけ隔離して育てると、肝心の部分の神経細胞が永久に育たなくなってしまうらしいのです。人間に当てはめれば、両親や兄弟からあまりかまってもらえなかった子供は、脳の社会性が育たないまま固定してしまうため成長しても孤独に陥りやすいということになります。いわば「社会脳」の発達障害で、その結果として「孤独脳」が完成してしまうわけです。
一方、成長したマウスを隔離すると、社会性をつかさどる脳領域が萎縮してしまいます。もともと社交的な脳を持っている人でも、孤独に陥れば、脳の構造が変化してしまうのです。この場合は、集団に戻せば脳の萎縮が改善・回復し、社会性を取り戻せることが確かめられています。しかし孤独の期間が長いほど、回復が難しくなるという研究結果もあります。
マウスを使った別の研究では、群の中の地位が高いマウスほど、孤独の影響を受けやすいことが示唆されています。人間社会に例えると、いままで会社の部長だった人が、定年退職で孤独に陥った途端、一気に老け込んでしまうといったケースでしょう。「自分は周囲から頼られている」「自分がいないと会社が回らない」と普段から思い込んでいる人は、要注意です。