女性不妊の新治療 月経血の幹細胞を使う子宮内膜再生増殖法
女性不妊の原因のひとつに「着床不全」がある。女性は排卵すると黄体ホルモンが分泌され、子宮内膜を厚くして受精卵の受け入れ準備を始める。そこに受精卵がやってきて、子宮内膜の1カ所に定着したら“着床”となり、妊娠が成立する。
着床不全は主に、加齢などの原因で子宮内膜が十分に機能しない(子宮内膜不全)、もしくは受精卵の質の低下によって起こる。子宮内膜不全に対しては、これまで血流改善療法やホルモン補充療法などが行われてきたが、効果的な治療法がないのが現状だ。
そこで近年では、さまざまな細胞に分化できる「幹細胞」を利用した新たな治療法の開発が期待されている。
不妊治療専門施設「はらメディカルクリニック」(東京都渋谷区)が、今年2月から臨床研究の参加者募集を始めた「子宮内膜再生増殖法(ERP)」もそのひとつ。同院の原利夫院長が言う。
「子宮内膜の再生のために幹細胞を用いるのですが、幹細胞自体を使うわけではありません。幹細胞を培養したときにできる上澄み液(上清液)には、サイトカインや成長因子など数多くの有効成分が含まれます。その液を子宮内に注入して、内膜を再生、蘇えらせるのです」