有力候補の開発は続々中止…認知症の新薬はなぜ登場しない
■新たな攻め口による開発も
では、AD発症メカニズムを「コリン仮説」から「Aβ仮説」に変えたのに、なぜAD治療薬の開発に成功しないのか?
「Aβが原因と考えられるようになったのは、家族性アルツハイマー病の原因となる遺伝子変異がすべてAβの量を増やすことがわかったためです。しかし、マウス実験ではAβだけでは神経細胞はほとんど死にませんでした。一方、時間をかけてタウをためれば神経が死ぬことはわかっています。そのため、ADはタウが原因で薬のターゲットをタウにシフトすべきとの考えもあります。しかし、タウだけたまるピック病や前頭側頭葉変性症などはADと臨床症状はまるで違う。通常の人の脳と違ってADの脳ではまずAβがたまり、その後タウが同じ場所にたまっていく。ですから私はタウの蓄積だけでADが起きるとは思いません。やはりADの原因がAβとタウであり、そのキッカケはAβの蓄積であると思います。ただし、開発中の薬によるAβ除去は、症状が出た段階では効用は少ないようです」
実際、米国では脳にたまり始める超早期な段階で薬を投与する臨床実験が用意されているという。では、新たなADの薬は従来通り、Aβをターゲットにしたものになるのか?