干しシイタケの嫌な匂いを除き栄養を残す調理法
生よりうま味が豊富なカラクリ
生物としてのキノコは何に属するかご存じでしょうか。植物に似ているけれど、植物ではない。もちろん動物でもない。菌類という立派な“第三極”にある生物である。私たちが食べる部分は、植物でいうと花にあたる。季節が寒くなると開いて胞子を飛ばす。胞子は低温や乾燥に強い“種”。新しいニッチ(隙間)を求めて風に乗って広がる。茎や根にあたる部分は細い糸状になって地中に広がっているので見えないが、菌類の本体は、むしろこちらの方にある。
菌類は植物ではないので自分で光合成してエネルギーをつくり出すことができない。なので、他の生物(主に植物)に寄り添って栄養を分けてもらう。ただし一方的に搾取しているのではなく、益もなしている。それは分解者としての作用だ。菌類の出す強力な分解酵素は、自然界では壊れにくい木材をいともたやすく分解し、自然の循環の中に戻してくれている。この分解作用によって土壌が豊かになり、他の生物の生育を支えることになる。
キノコはそれぞれに好みの宿主がいる。シイタケの場合、その名の通り、椎やコナラ、クヌギなどの広葉樹につく。独特のうま味は、シイタケの中にある分解酵素がタンパク質やDNAを分解することによって生じるアミノ酸やグアニル酸による。この分解作用は乾燥する過程で高まるので、干しシイタケの方がよりうま味が強い。食物繊維、ビタミン、ミネラルにも富む。今では米国でも人気食材となり、スーパーに行くと、そのまま「shiitake」と表示されて売られている。
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
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