嗅覚味覚がなくなるのはウイルスがニオイに関わる粘膜や神経を障害している可能性
「一般的に多いのは、ウイルス感染症で風邪症状が表れると鼻水が出て、鼻が詰まった状態になり、においの分子が嗅覚センサーがある鼻の奥まで届かなくなるケースです。それによって同時に味覚も感じづらくなります。また、鼻が詰まって口呼吸になると唾液が減り、口腔内が乾きます。それで舌にある味覚センサーが障害を来す患者さんもいます。インフルエンザなどのウイルス性の感冒にかかった後に嗅覚と味覚にも障害を起こす症例はよくあります。ただ、今回の新型コロナウイルス感染症で嗅覚や味覚に異常を来した事例を見るとほかに症状が出ていない段階の初発症状とのことですから、一般的なパターンに当てはまらないケースといえます」
■いきなり耳鼻咽喉科に駆け込んではいけない
となると、ウイルスによってにおいを感知する粘膜や細胞が障害されている可能性もある。われわれがにおいを感じるのは、鼻から入ったにおいの分子が鼻腔の奥の最上部にある「嗅上皮」という粘膜に溶け込み、嗅上皮にある嗅細胞が発した電気信号が嗅神経、嗅球、脳へと伝達されることで生じるといわれている。