“ノー残業”なのに質の高い医療を多くの患者にできる理由
ではなぜ当院ではそんなふうに、質と量を確保しながら、しかも医師のノー残業が可能なのか? それはひとえに「診療パートナー」によって業務を分け合い、共同化しているからにほかなりません。
たとえば医師と患者さんやご家族が話した内容を「診療パートナー」がiPadなどで電子カルテに代行して入力し、情報の共有化を実現したり、また処方箋は「診療パートナー」が下書きを用意し、医師が確認をして処方するなど、大幅な時間の節約を実現しています。
さらにケアマネジャーや訪問看護師などへの連絡は医師の代わりに「診療パートナー」が行うなど、医師は本来の仕事である診療に、専念できるわけです。
病院での勤務経験もある診療パートナーがこんなことを言っていました。
「病院で勤務していた時は、上から指示が下りてくるだけでしたが、在宅だと『こうしたら?』『この方が患者さんの望んでいることが実現できるかも』といったことを提案できるので、自分の頭で考えるし、患者さんにもっと良いことをしてあげたい気持ちが湧いてきます。病院で働いていた時は、自分の資格の範囲だけでしか仕事ができなかったのですが、今の在宅医療だとカルテの下書き、書類の準備、薬の手配調整、他事業所さんとの連携など、全て自分たちでやる。最初は大変だったけど、やれる範囲が多くてとてもやりがいがあります」
在宅医療で患者さんに関わるスタッフは、全て対等か、時に医師以上の立場でもよいのではと思っています。患者さんの生活をまるごと支えることができる診療パートナーの役割は今後もますます重要になっていくことでしょう。そしてこの試みは未来の医療現場の働き方のベースになるかもしれません。