マニュアルがないからこそ、患者に合った策を共に学んでいける
入院から在宅医療に切り替え、患者さんが自宅に戻られたその日からご家族が一番戸惑うことといえば、「様子がおかしいと思った時、どの程度なら医師に電話をしていいのか。どのタイミングで連絡すればいいのか」ということ。私たちはいつも、「不安に感じたら、症状の程度に関係なく、いつでも電話してください」と患者さんやご家族に伝えています。
よくあるケースが「退院早々、食欲が落ちてしんどそう」「退院翌日に熱が上がった」「咳がひどくなった」というもの。ご家族にしてみれば、なにか重大な病変なのではないかと心配されることはよく理解できます。日頃、気丈に振る舞っていた奥さまも、退院してきたばかりの夫が、しんどそうにしている姿を見れば慌ててしまうこともあるでしょう。
そんな時、私たちはご家族の疑問に答えながら、症状を詳細に聞き出します。日頃渡されている薬を飲むよう指示をしたり、寝床の状態を確認し、「熱がこもっているから布団を少し薄くしてください」などの提案をすることもあります。
その上で、もし緊急性がないと判断できた場合、そのまま電話でのやりとりで終わる時と、あえて往診に伺う時があります。それは私たちが伺うことで、ご家族と私たち双方にとって、共通した「学び」を得られることがあるからです。