暗黒街の顔役アル・カポネは晩年「梅毒悪化」に苦しんだ
今年2月に公開された映画「カポネ」では、その後半生が描かれています。カポネは脳梅毒の影響で痴呆症状がひどく、大小便を垂れ流すために医師がおむつを用意したほどだったそうです。ちなみに、民間人で初めて梅毒の特効薬「ペニシリン」を使ったのはカポネです。しかし、梅毒末期だったため、効果は上がりませんでした。そして梅毒に苦しみながら1947年1月25日に脳卒中に伴う肺炎で亡くなったのです。
また、カポネはマラリアによる「発熱療法」も行ったといわれています。20世紀の始めに神経梅毒を治療するために施されていた治療法で、マラリアにわざと感染させて高熱を出させ、神経梅毒が引き起こす麻痺性認知症を治すという、今では考えられないような非倫理的なやり方です。
この治療法を考え出したのはオーストリアの精神科医、ワーグナー・ヤウレックです。彼が担当した神経梅毒患者の中に熱を出した後に症状が改善したケースがあったことから、発熱が神経梅毒を改善すると考えたのです。彼は高熱を発する病気を調べ、密かに自分の患者を使って実験します。そこで「キニーネ」と呼ばれる特効薬があるマラリアに辿りついたのです。彼はマラリアにかかった兵士から採血し、その血液を神経梅毒患者に注射してマラリアに罹患させ、キニーネで治療する行為を繰り返します。その結果、半数は症状が改善したと言います。ただし、マラリアで亡くなる人も多かったそうです。
その後、ペニシリンが普及したため、危険な発熱療法は行われなくなりました。なぜ発熱療法が効いたのかのは今もわかっていません。ちなみに、ワーグナーはこの治療の発見により1927年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。