「胎児」の心臓手術は医師も機材も高い技術が必要になる
たとえば、先天性横隔膜ヘルニアに対する胎児手術が該当します。生まれつき横隔膜に欠損孔と呼ばれる穴が開いていて、本来はお腹の中にある胃、腸、肝臓、膵臓、腎臓などの腹部臓器が胸の中に飛び出してしまう病気です。穴が大きく、胎児期にそうした臓器の脱出が起こると肺の発育形成不全を来し、死産や出生直後の死亡リスクが高くなります。そこで、母親の胎内にいるうちに手術を行い、肺がきちんと成長できるように促すのです。
■出生後の手術はハイリスク
心臓の胎児手術でも同じですが、胎内の赤ちゃんは母親との間で「交差循環」のような状態になっています。交差循環(法)というのは、たとえば心臓を止めて子供の手術を行う際、子供の動脈・静脈と、母親(または父親)の動脈・静脈を管でつないで血液を循環させる方法です。
このような交差循環の状態であれば、赤ちゃんの肺や心臓の機能にトラブルがあっても、母親側の臓器の働きによって肺や心臓の循環が、ある程度は維持されます。いわば母親が人工心肺装置になっているわけですが、治療中の母体への負担についても厳重な管理が必要なことは言うまでもありません。こうした状況であれば、母体の呼吸循環に対する厳重な管理を行った上で合併症予防にも配慮しつつ、胎児への外科治療が可能になるわけです。