柳沢先生!教えて!睡眠で知りたいこと全部聞いた(前編)「日本人は世界で一番睡眠不足」
寝不足はやはり、寿命を縮める
──どうやったら計測できるんですか?
提携している医療機関が全国で70カ所くらいあります。そこに行って検査を処方してもらうとデバイスが送られてきます。
──睡眠不足の人はやはり、病気になりやすかったり、寿命が長くなかったりしますか?
寝不足の人は死亡リスクが確実に上がります。寝過ぎの人も死亡リスクは上がりますが、これは因果関係が逆なんです。9時間以上眠るような方は何か寿命を短くするような身体的な持病をかかえている可能性がある。そのせいで睡眠時間が長くなっているのかもしれない。だとすると、因果関係が逆になります。
──寝不足の方は寿命を縮める?
寝不足だと寿命は短くなります。寝不足は確実にさまざまな病気の原因になるからです。メンタル、メタボ、認知症、がんなどで、多くの場合、相互リスク関係にあります。メンタル、メタボが悪くなると睡眠も悪くなるのです。
──睡眠時間とがんの発症率について、因果関係を示す客観的なデータがあるのですか?
がんに関してはそこまで単純じゃなくて、慢性的な睡眠不足だと免疫系がダメになってがんのリスクが増えるのです。問題は睡眠の量だけではなく、シフトワークでもリスクが上がります。時差ボケが連続しているような状態が続くと乳がんのリスクが上がったのです。20年くらい前にアメリカの看護師さんで日勤、夜勤の切り替えがしょっちゅうある人と日勤だけの人のデータをとりました。そのスタディーでは、シフトワークのある人の乳がんリスクが2倍近く増えました。
──人は何のために眠るんですか?
それは分かっていないですね。
──だけど、眠らないといろんな症状が起きるということは分かっている?
ラットの実験では、強制的に眠らせないと体重が激減して死んでしまいました。
──人はほっといたら自然に眠れるものなんですか?
睡眠欲求が高まると“ししおどし”のように睡眠のスイッチが入ることは分かっています。健常な人で、何も社会的に制約がなく、全く自由に生活できる環境におけば人間の場合、ほとんどの人は夜暗くなると自然に眠って、朝明るくなると自然に起きるようになる。