認知症の家族を施設に入所させた方がいいタイミングは?
被介護者の状態として、「徘徊(はいかい)」は当然ながら、それ以前の段階で「転倒」が多くなったり、「トイレに1人で行けなくなった」ら、個人の介護の手を離れるようお勧めしています。排便は深夜でもコントロールできませんし、被介護者が起きてしまうと寝付くまで見守らなければなりません。トイレは何十年と毎日してきた日常行動ですから、1人でできなくなるのは「24時間の見守りが必要となる」サインになります。また、食べ物が腐っているかを判断できずに何でも口にするようになったときも“見張り”が必要な状態です。
ただ、個人差はあるものの認知症は思ったよりも早く進行します。異変を感じてからでは入所施設が見つからないケースは多い。そのため、介護者の方には家族が認知症と診断されたら、家族会議を開くよう勧めています。公的サービスの確認や施設見学の手配、いま被介護者はどの位置にいるのか、軽症のうちにそうした状況を把握して、被介護者の将来設計をしてもらいます。介護者を守ることにもつながります。
じつは深刻なのが、被介護者が亡くなった後に「燃え尽き症候群」になり、心身の病気を発症してしまう介護者が少なくないことです。お互いのために介護に“リミット”を設けるのは悪いことだと思ってはいけません。
▽大川昭宏(おおかわ・あきひろ) 1997年帝京大学医学部卒業。国立精神神経医療研究センター、国立国際医療研究センター心療内科勤務などを経て、現在、かつしか心身総合クリニック院長。専門は心療内科全般、職場のメンタルヘルス(産業医歴20年以上)。