認知症になるとあることないこと「作話」をするのはなぜ?
実際、私が診た患者さんに失禁で汚した服をタンスの奥にしまい込む方がいて、濡れた服を家族が見つけると、本人は「水をこぼしただけ」「洗濯していただけ」と言ったあと、今度は「私じゃない、ヘルパーさんが入れたんじゃない?」と取り繕おうとします。他罰的な態度に、家族は振り回され疲れてしまう。しかし、認知症の方は家族にわざと嫌がらせをしているのではなく、作話を通して記憶障害を補おうと自分自身を守ろうとするのです。
家族は否定も肯定もしないことが大事です。否定すると本人は不安感や孤独感が増し、認知症の症状がより進行する恐れがあります。「ウソをつかないで」と、責めたり追及するのも厳禁です。その時起きた出来事は記憶できなくても、感じた感情はずっと記憶されます。新しいことを覚えるのは脳の海馬と呼ばれる部位です。この海馬が萎縮するのがアルツハイマー型認知症。具体的に解明されていませんが、感情は海馬と違う場所に保管され、記憶に残り続けると推測されています。
患者さんが、「お金を盗まれた」と訴えられた場合には、「心配だよね」「悲しいね」と、盗まれたと思い込み不安を感じている点だけに強く同意をしてください。そこで「私は味方だよ」と笑顔で接して、私も一緒に捜すの手伝うよと笑顔で味方アピールをすると、認知症の方は安心して落ち着きます。「昔は大女優だった」のような自慢話には、「そうだったかしらね」と否定もせず肯定もしないことがよいと思います。