MCI(軽度認知障害)(1)パソコンの暗証番号が思い出せない…
ひとり娘の長女夫婦は都心部に住み、藤原夫婦は横浜市内で愛犬1匹とともに暮らす。老後の生活に支障が起きない程度の蓄えもあった。
人生をリタイアするには、まだ少し早い。古巣の嘱託社員として、自宅でパソコン操作をしながら、各種企業の経営分析などを行っていた。
3年前のことだった。朝方、いつものように使い慣れたパソコンの電源を入れ、起動させようとしたとき、キーボードを叩く指が止まった。そらんじていた6ケタの暗証番号が思い出せないのだ。
あれ、どうした!? 自宅の住所や電話番号と同じく、手帳に記録もしていない。藤原さんは頭を抱えて呆然としてしまう──。 (つづく)