言葉の意味が分からなくなる「意味性認知症」とは? 側頭葉の萎縮で発症
認知症といえばアルツハイマー型認知症を思い浮かべる方が多いですが、65歳未満に見られやすい「意味性認知症」があります。2015年に指定難病に認定された前頭側頭葉変性症のひとつで、主に側頭葉の萎縮によって発症します。
左側頭葉は言語の記憶や理解、右側頭葉は人物に関する意味記憶を担っていて、意味性認知症と診断された患者さんのほとんどは左側に障害を受けていました。そのため、言葉の意味が分からなくなり、たとえばハサミを見ても「ハサミ」という名称や何に用いる物なのかを忘れ、こちら側が「ハサミだよ」と伝えても初めて聞いた言葉のような反応を示します。人によっては、「ハ」とヒントを与えたり、実際に手で持つと思い出すケースも少なくありません。ほかに、動作がゆっくりになったり足が小刻みに震えるパーキンソン症状も特徴です。
意味性認知症と診断された60代の患者さんは、「漢字が読めなくなった」「人の顔と名前が覚えられない」と異変を感じて、ご自身で調べているうちに意味性認知症を知り当院を受診されました。診察の際、紙に「ねこ」と書いてくださいと伝えたところ、「いむ」や「ねコ」など、正しい答えがスッと出てこない。また、「団子」を「だんし」と読むなど、漢字の読解にも困難が生じていました。ただ、残存している単語を用いれば流暢に会話を行えますし、アルツハイマー型認知症と異なり記憶力も比較的保たれているので、周囲は認知症だと気付きにくく、本人も症状を自覚しやすい。そのため、初期の段階では、言語機能が低下している状況に混乱し、うつ状態を引き起こしやすくなるので注意が必要です。