糖尿病で足の切断に至ってしまうケースはどれくらいあるのか
全身状態が悪く、全身麻酔に耐えられないと判断されれば、体の一部のみを麻痺させる伝達麻酔で行います。切断はチェーンソーのような機械を用いて行うので、麻酔で痛みはないものの激しい振動は伝わります。そのため、中には手術中に自分の足が切断されている状況に耐えられず、術後にせん妄を起こして精神科に転科してしまった患者さんもいます。それほど、切断は精神的な負担が大きいのです。
術後は、両足を太ももから切断している方でなければ、基本的に靴や義足を作製します。ただ、50代など比較的若い人であれば再び歩けるよう義足を装着してリハビリを行えるのに対し、高齢かつ糖尿病で全身状態が悪く切断に至った人の場合、足の血管だけでなく心臓の血管も動脈硬化が進行しているので、十分なリハビリが行えません。再び歩行できるまでに時間がかかるうえ、長引くリハビリに挫折して車椅子生活になり、予後が悪くなる方も多いのが現状です。
実際、切断から1年後に生存している確率は50%程度ともいわれています。生存率を下げないためにも、足の切断は避けなければならないのです。
そこで私が患者さんの命と足を守るために実現したのが「血管再生治療」です。次回は実際に治療を受けた患者さんの実例を交えながらお話しします。