梅雨のだるさ…不調の原因は首にあり「やる気が出ない」が6割、「対処法わからず」5割
対症療法の薬が効かず自殺に
体の声が聞こえたとしても、必ずしも治療や対策に結びつかないことが少なくないという。
「自律神経のバランスが崩れた状態は、医学的に自律神経失調症です。その症状は前述した通り倦怠感だけでなく、頭痛やうつ、めまい、ドライアイ、下痢、不眠などさまざまで、患者さんはそのときにつらい症状ごとに対応する診療科を受診します。倦怠感は内科、頭痛は脳神経外科、うつは精神科、めまいは耳鼻咽喉科、下痢は消化器科……といった具合です。しかし、病気の根本は自律神経ですから、そこを治療しないと良くなりません。対症療法の薬が増えるだけで、根本的な治療にならないので、病状をこじらせるケースがとても多く、私の外来にたどり着いたときには、自殺寸前や自殺未遂という方がよくいます」
22年に自ら命を絶った俳優の渡辺裕之さん(享年66)は、妻で女優の原日出子さんが公表したコメントによって、自律神経失調症だったことが明らかになった。その内容は、こんな具合だ。
「『眠れない』と体調の変化を訴えるようになり、自律神経失調症と診断され、一時はお薬を服用していました。しかし、少しずつじわじわと、心の病は夫を蝕み、大きな不安から抜け出せなくなりました。医師にも相談し、希望の持てる治療を始めた矢先の、突然の出来事でした」
■スマホの前傾姿勢やめ、全身浴を
自律神経失調症の薬物療法がうまくいかなかったことによる悲劇といえる。自律神経失調症は、どうして起こるのか。
「首の筋肉の凝りが原因です。頭の重さはおよそ6キロ。本来、首の骨はゆるやかなS字カーブを描いて重い頭を支えていますが、パソコン仕事やスマホ作業などで前傾姿勢が続くと、S字カーブが失われてストレートネックになります。そうすると頭の重さが直接、首の筋肉にかかり、首の筋肉が凝るため、首の筋肉の内部を通る自律神経が少しずつ障害されていくのです」
その最悪の結末がうつ状態の深刻化だが、ベッドから起きられないほどのひどい倦怠感を示す慢性疲労になる人もいるという。いずれにしても、根本は首だから、首の治療が欠かせない。治療とともに生活の注意点はどうか。
「治療は、低周波電気刺激療法と遠赤外線照射で首の筋肉の凝りをほぐすのが基本です。それと同時に、生活の工夫も欠かせません。入浴時は、シャワーや半身浴ではなく首までしっかりとつかって首を温めること。職場や自宅でエアコンに当たるときは、冷気が直接、首に当たらない席に座るか、ストールなどで首をガードすることをお勧めします。何よりも、パソコンやスマホの連用を避けること。仕事で使うときも、1時間に1回、10分程度はパソコンなどから離れて、首を休めることを習慣づけるのが無難です」
首の不調がベースにある自律神経によるうつ状態は、精神科が診断する精神性うつより重く、「自殺率は精神性うつの5倍」という。
この時季に、だるさをはじめ不調が悪化する人は、一度、自律神経の異常を疑ったほうがいいかもしれない。