梅雨のだるさ…不調の原因は首にあり「やる気が出ない」が6割、「対処法わからず」5割
だるくて、やる気が出ない──。日本列島はようやく梅雨入りし、ジメジメとした暑さが続く。そんな天気の影響か、気持ちの問題なのか、生活や仕事にブレーキがかかりやすい。どういうことなのか。
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梅雨の体調について調査結果を発表したのは、食品大手の明治だ。働く20~60代の2000人を対象に「梅雨時期の体調に関する困りごと」を質問したところ、最多は「やる気が出ない」で59.6%だった。以下、「不調に対する対処法が分からない」(48.7%)、「不調を感じる」(48.1%)、「仕事のパフォーマンスが下がる」(41.9%)と続く。
この時季のだるさが生活や仕事に影響していることを裏づける結果となっているが、つらくても仕事はなかなか休めていない。全体の7割は「体調を崩しても隠して勤務した」。中でも30代女性はその傾向が強く、81%に上った。周りに理解されにくい症状で仕方なくガマンしているのか、厳しさを増す人手不足がそうさせるのか。真相はともかく、この時季特有のつらさを押して仕事に向き合っていることがよく分かる。
「強いだるさは、自律神経のバランスが崩れていることによる典型的な症状です」
こう言うのは、東京脳神経センター理事長の松井孝嘉氏だ。
松井氏は2022年、交感神経と副交感神経からなる自律神経のうち、特に副交感神経の異常が難治性うつにかかわっていることを突き止め、世界で初めて国際医学ジャーナル「BMC」に投稿した。自律神経治療の第一人者だ。松井氏が続ける。
「自律神経は、交感神経と副交感神経がセットになって、心臓の動きや消化・吸収、体温調節、血流などのほか、精神状態も含めて、体のすべての機能をうまくコントロールしています。そのバランスが崩れると、当然、症状は動悸、めまい、息切れ、手足の冷え、頭痛、不眠、イライラなど幅広く見られますが、中でも特徴的なのは全身の倦怠感です」
■気圧や気温の差で悪化する
では、なぜこの時季にだるさが悪化しやすいのか。松井氏に対策を含めて詳しく聞いた。
まず、この時季の要因として大きいのは、気圧差と気温差だ。
梅雨の前後は梅雨前線の影響で大気が不安定で気圧が乱高下する。一方、GWくらいのカラッとした気候からジメジメと暑い梅雨モードになると、自宅やオフィスでは少しずつエアコンを使い始め、夏の到来とともにエアコン全開になる。室内と屋内の気温差も大きい。
「ヒトの体は、気圧で押される力を内側から押し返してバランスを保っています。たとえば、ある状態から気圧が下がると外からの力が減って、その分血管は膨らもうとしますが、一定の血流を保つため、交感神経が働いて血管を収縮させようとするのです。気圧が上がるときは、逆の働きが作用して、副交感神経によって血管は拡張します。これが健康な体の仕組みです。ところが、自律神経のバランスを崩していると、その調節がうまく追いつかず、不調が強く出やすい。この時季は、生活のいろいろな場面で気圧差や気温差の影響を受けやすいため、強い倦怠感が続くのです」
最近の研究も、気圧差や気温差が症状悪化のキッカケになるという松井氏の指摘を裏づける。愛知医大のグループは2015年、尾張旭市の成人2628人を対象に慢性的な痛みの変化について調査。その結果、痛みがある人のうち約49%は、「痛みは悪天候や悪天候が近づくときに悪化する」と回答した。
一方、17年にカナダで報告された研究では、噛み合わせで痛む11人と片頭痛の20人についてアンケートしたところ、噛み合わせの痛みは気圧の低下で悪化し、片頭痛は気温と気圧の上昇で悪化することが判明した。
友人とたまに顔を合わせると、お互いに不調自慢で「季節の変わり目が特につらい」と口をそろえ、「もう無理はできないな」と苦笑いしたりする。
あの経験則、体の内なる声は、決して間違っていないのだ。