夏の脳梗塞…後遺症を残さない血栓回収療法は時間との勝負
とりわけ夏の時季は軽い熱中症を疑って病院を受診したら、実は脳梗塞だったケースも珍しくはないという。重い後遺症を残さないためにも、少しでもいつもと違うと感じたらすぐに救急車を呼んだ方がいい。
「脳梗塞の治療はとにかく時間との勝負です。一般的には、t-PA療法(血栓溶解療法)と呼ばれる、脳血管に詰まった血栓を薬で溶かして血流を再開させる治療が選択されます。ただ実施できるのは発症から4.5時間以内と短く、太い血管が詰まっている場合には効果が期待できない。近年は、血栓をカテーテルで物理的に取り除く『血栓回収療法』が広まりつつあります」
血栓回収療法は、足の付け根などから細いカテーテルを挿入し、カテーテルの先に付いた網目状のステントレトリーバーに血栓を絡めて体外に取り出す治療法だ。血栓ができた位置や大きさによっては、掃除機のように血栓を吸い込む吸引カテーテルを併用し、血流を再開させる。血栓回収療法は発症から8時間以内が適応時間とされ、4.5時間以内であればt-PA療法と同時に行うという。
「手術は局所麻酔が基本で、血栓回収療法自体は早ければ10~20分程度で終わります。昨年は50~60件実施し、中には搬送時には会話がまったくできず、手足が動かなかった人でも手術直後から普段通り会話ができて歩けるまで回復される方も少なくありません。ただ、脳梗塞は治療が一分一秒でも遅れると片麻痺や失語、高次脳機能障害といった後遺症が残るリスクが高い。本人や周囲が素早く異変に気付き血栓回収療法を行う病院に搬送してもらう必要があるのです」