「心房中隔欠損」は治療しないと40歳で寿命を迎えるは本当なのか
■手術を受けるべきタイミングは決められている
先ほども触れたように、一般的に心房中隔欠損は20代ごろまでは無症状のケースが多く、それまでに手術などの治療を行えば健常者との寿命の差はないといわれています。一方、手術をしなければ平均寿命は40歳前後という報告もありますが、これはかなり以前の“教科書”に載っていたものです。
心房中隔欠損の診断は、いまは心臓超音波(エコー)検査によって行われるのが一般的です。しかし、まだ超音波診断機器がなかった時代は、血液検査で酸素飽和度の異常を調べたり、カテーテル検査を実施して初めて穴があることがわかるケースがほとんどでした。聴診器による診断でも典型的な所見がないため、カテーテル検査まで行うのは明らかに疑いがある患者さんに限られていました。そうした患者さんの多くは、ある程度大きな穴があいているため、心房中隔欠損と確定診断がついた人は、比較的早い段階、40歳くらいで心不全を起こすケースが多かったのです。
心房中隔欠損で手術をしなかった患者さんの平均寿命が40歳前後とされていたのは、そうした当時の事情が大きいといえます。以前は、同じ心房中隔欠損でも、穴が小さかったり、症状が現れない人は、心房中隔欠損だとは認識されないまま寿命を迎えるケースが圧倒的多数を占めていました。しかし、近年は超音波診断機器の進化によって、少し異常があるからと精密検査を受ければ、心房中隔欠損が見つかるようになりました。ですから、いまは心房中隔欠損が見つかっても、穴が小さくて短絡の程度も軽く、症状も出ないケースでは、そのまま天寿を全うする人がたくさんいます。