汚染された水田の除染 開発のルーツは福島第1原発事故の避難区域の復興支援
セシウム吸着のアイデアを応用
近大工学部(広島県東広島市)の井原辰彦教授(当時=無機材料化学)らと取り組んだのは、放射性物質セシウムに汚染された水田の除染だった。土壌中のセシウムを電気化学的方法で分離・除去しようと実験を重ねた。
「その際、検討したのが、無数の細かい穴を持つ多孔質のアルミニウム材を電極に用いて、セシウムを吸着するアイデアでした。セシウム除去という点では成就しませんでしたが、福島第1原発にたまり続けるトリチウム水の分離・除去技術に応用できるのではないかと着目しました。16年ごろのことです」(山西氏)
約2年後、民間企業と連携し、井原氏が中心となって研究を進めた成果が発表された。「トリチウム水を分離・回収する方法及び装置を開発」──。超微細な穴を多数持つアルミニウムの粉末を加工したフィルターにトリチウム水を通すと「初期段階でほぼ100%」という高い効率でトリチウムを分離できたとうたっていた。
「そのようなリリース内容でしたが、実用には遠くて、ちょっと言い過ぎかなと思いました。1時間に処理できる量が微小でしたから」
共同研究者の山西氏は、やはり柔和な表情で淡々と語るのだった。=つづく
(取材・文=今泉恵孝/日刊ゲンダイ)