世界が注目!マイクロソフト「AIラボ」でできること タッグを組む企業からは驚きのアイデア続々
開発作業は5日。着手から完了まで4~6週間
では、AIラボを利用する企業は、どんなサポートが受けられるのか。平井所長に聞いた。
まず利用条件として、MSのAzure(アジュール)というクラウドサービスを利用している、またはしたい企業。公式サイトから申し込むと、審査は1週間ほど。合格した企業は、秘密保持契約を結び、MSのサポートを受ける。
「お客さまのプロジェクトを進めるにあたり、MSのAIをはじめとする先端技術をどうやって適用させてビジネスに結びつけることができるか。そこを細かく打ち合わせした上で、専属エンジニアがサポートする開発作業に入ります。打ち合わせでは、お客さまが目指すゴールと、ゴールの定義が明確なほど、その後のスピードが速い。打ち合わせ期間は3~4週間で、開発作業の前にはラボ契約を締結。ラボでの実際の開発作業は5日です。短距離走のようなスピード感を持って開発作業を行うので、開発はスプリントと呼んでいます。つまり、すべてがオーダーメードです」
昨年10月の開所から取材した3月21日までに92社がAIラボを訪問。申し込みは55件。今年に入ってからは、ほぼ毎週スプリントが行われていて、フル稼働状態だ。
「日本の大企業や中小企業だけでなく、海外案件も少なくありません。アジア太平洋エリアだけでなく、欧州の企業も含まれています」
AIラボはわずか世界に6拠点だけに、神戸も世界中で注目されているのだ。専属技術者はソフトウエアエンジニア、クラウドエンジニア、データサイエンティスト、プログラムマネジャー、電気エンジニアなどで、神戸には5人程度が常駐するという。
ちなみに開発にあたっては、企業の生データを使用する。秘密保持契約をきちんと結ぶのはそのためでもあるが、理由はほかにもある。
「サンプルデータだと、開発した成果物がぼやけたものになってしまうのです」
こうして企業とAIラボのコラボがスタートすると、開発完了後の振り返りやリポート作成までの時間を含めて4~6週間というスピード感だ。世界中が注目するのも当然だろう。
料金は内容によって変わるが、「成果物の知財は、お客さまに帰属します」。神戸市の中小企業やスタートアップ企業には、無料で利用できる枠もあるそうだ。
最後にAIラボの誘致にも一役買った川崎重工の技術開発本部副本部長の加賀谷博昭氏が言う。
「われわれがこれまで手掛けてきた産業用ロボットは、閉鎖空間での繰り返し作業は得意でも、何かと連動して社会的に動くことは苦手でした。しかし、生成AIの登場で言葉を理解したり、チームで連携したりするロボット開発ができる時代になっています。その結果、たとえば病院では、検体回収ロボットが活躍。各フロアに1台ずつ配置して、エレベーターまで運ぶ役割を担わせることで、ナースの仕事の軽減に成功しました。仕事量に換算すると、ナース2人分です。今後、生成AIを組み込んだソーシャルなロボットが、人材不足を解決するカギになるとみています」
AIラボのような施設がより身近になれば、日本の未来に明るさが見えてくるだろう。