東京競馬場のお膝元「府中」は奇妙でアートな街だった GWは大國魂神社「くらやみ祭」開催
GW真っただ中の5月5日(日)に開催されるNHKマイルC。府中市にある東京競馬場はかつて大國魂神社の御供田で、6日に「お田植え祭」という神事が行われていた。その大國魂神社で4月30日から5月6日にかけ、「くらやみ祭」が行われる。府中が熱く盛り上がる季節だ。
■なぜ真っ暗な中を神輿で練り歩くの?
江戸時代は“真っ暗”な中で行われていた「神輿渡御」(神輿の練り歩き)の神事。くらやみ祭の由縁だが、見えないというだけで何かミステリアスな雰囲気が漂う。
「神聖な御霊は人目に触れてはいけないという古来の儀礼から、昔は町々の明かりを消して行われたそうです。ただ、今は時代に合わせて照明をつけたまま行われます。期間中は80万人超の人出が予想されますね」(府中市観光協会)
くらやみ祭となってはいるが、現在は外国人観光客も多く、警備の問題もあって完全な暗闇はペケなのだろう。
さらに、他にも現代風のアレンジがある。スタート時間だ。くらやみ祭のクライマックスとなる「神輿渡御」は、5月5日の午後6時から9時ごろに行われる。江戸時代は町の明かりを消した深夜に始まり、翌日の午前3時ごろに神社に戻っていた。だから「くらやみ祭」なのだが、1959(昭和34)年からは午後4時スタートに変更。ただ、これだと競馬レースのお客さんとかぶってしまう。そのためJRAは警備上の問題から祭り期間中の東京競馬場開催を自粛していたが、2003年からは午後6時スタートに再変更。これでレースとかぶらなくなったため、以降は競馬も行われるようになっている。
つまり、この時期の府中市はレースも祭りも同時に楽しめるナイスなタイミングなのだ。
■なぜお尻丸出しの子どものアートがあるの?
京王線「府中駅」周辺の楽しさはこればかりではない。歴史とアートが混在する文化的な薫りにあふれている。
最初に向かったのは「桜通り広場公園」にある奇妙なパブリックアート作品(①)。お尻丸出し、なんなら前もモロ出しの子どものブロンズ像が連なっている。
ハテ? どこかで見たように思うのは気のせいか? 実は、2010年の平城遷都1300年記念事業「せんとくん」でおなじみの作者、薮内佐斗司氏(元東京芸術大学副学長)が手がけた「童々広場」という名の作品なのだ。
「彫刻のあるまちづくり推進事業で設置されたもので、都市景観とアートを融合させる目的があります。市民の目線でアートに触れられるよう、美術館ではなく、外に設置しております。薮内先生が特に府中市にゆかりがあるというわけではありません」(府中市文化スポーツ部担当者)
薮内作品だけあって仏教的な要素と愛嬌が混在したすてきなアートだ。
ここから右方向(東)に真っすぐ歩くこと5、6分。こちらは本物の子どもたちが大勢集う「ルミエール府中」(②)。市立中央図書館が併設されており、5月19日まで特集本コーナーで「紫式部」の特集展示が行われている。
■なぜ源義家の像が立っているの?
次に向かったのは、やはり府中の名所としてよく出てくる「ケヤキ並木」。府中駅の西脇を南北500メートル続く並木道(大國魂神社の参道)で、源頼義・義家父子が奥州征伐(前九年の役)の凱旋時にケヤキの苗木1000本を神社に奉納したのが始まり(現在は120本ほど)。日曜と祝日には歩行者天国となる馬場大門ケヤキ並木のところには「源義家の像」(③)が建てられている。
八幡太郎の名で知られる義家は、鎌倉幕府をつくった源頼朝、足利幕府をつくった足利尊氏の先祖でもある。
「西暦645年の大化の改新以降、府中には武蔵国の国府(県庁)が置かれ、早くから政治、経済、文化の中心地として栄えてきました。鎌倉時代末期は合戦の舞台となり、江戸時代には甲州街道の宿場町として栄えていたのです」(府中市政策経営部担当者)
とにかく昔はここ府中が東京の中心だったのだ。源頼朝が妻・政子の安産祈願を大國魂神社でしたり、その頼朝を慕う徳川家康が江戸入城から神社を保護し、社領として500石を寄進したりしている。
文化の薫りといえば、地元府中市民に愛されて150年、明治元(1868)年創業の老舗洋菓子店「モナムール清風堂本店」(④)もそのひとつ。1階がカフェ、2階がレストランとなっており、本日のお目当ては1階カフェのケーキ「紫式部」(税込み605円)。鹿児島県産紫芋を使った甘みを抑えた味わいのケーキだ。
150年前の府中はどんな感じだったのか……、と想像しながら食べてみるのも一興だ。さらにNHKマイルCの馬券も取れたらいいが。