ウェルビーイングな生き方を探る(下)振り返ってみたときに「あ、これで良かったんだ」という幸福感
──その満足感はどこから生まれたものなのでしょうか。
香山 ここの人たちは、生活者として自分でいろんなことを決めながら生きているんです。穂別はメロンが特産なんですけど、ずっと田んぼをやってきた人が、温室ハウスを建ててメロン栽培に転換するというのは苦渋の決断です。メディアやネット情報で有利な方に乗って利口ぶっている都会の人より、生活しながら自分で決断していく方がはるかに賢明です。満足感の背景には、そういう生き方があるのだと思いますね。
──周りとの関係も大事にしているのでは。
香山 自然環境が厳しいのでみんなで助け合わなきゃ生きていけない。買い物も大変だから、ものを分けたりとかは日常で、そういうふうに生きているんですよ。人と一緒に生きていく、思いやる、助け合うのが当たり前なんですね。
──趣味や嗜好品も幸福感につながりますか。
香山 そう思います。この地区は喫煙率がすごく高いんです。「やっぱり一服するのが生き甲斐なんだよ」と言う患者さんもいて、とても「やめなさいよ」とか言えないですね。農作業をされて、ちょっと一服するとか、自分の体を通して本当に好きなものを味わうっていうことは大事なことですね。