ウェルビーイングな生き方を探る(下)振り返ってみたときに「あ、これで良かったんだ」という幸福感
高まる政治不信に加え、性加害、パワハラがはびこる日本社会。生きづらい時代の中で幸福を追い求めることはできるのか。日本の病の背景とウェルビーイングな生き方の可能性について精神科医の香山リカさんに話を聞いた。
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──閉塞的な社会の中で、幸せな生き方とは。
香山 勝ち馬に乗ることによる自己確認では一瞬、なんか脳内麻薬みたいなものがバーッと出て幸福になるみたいな感じを抱くかもしれません。でも、それはまやかしでしかない。そうじゃなくて、振り返ってみた時に「あ、これで良かったんだ」みたいにじんわり思えるのが自分を支えてくれる幸福なんじゃないかと思いますね。
──北海道・穂別の診療所で地域の人々の暮らしと向き合われての実感でしょうか。
香山 いろんな方と触れ合う中で、おみとりをする機会もあります。多くの方たちが自分の人生に満足して亡くなっていかれます。ある農家の方は、「私がもしいなくなってもね、今年作付けした果物があるから、それを診療所の人たちで分けてください」という話をされて亡くなりました。その方の顔を見て、人生に満足してるってことがよく分かりました。