令和にまさかの「株高バブル不況」突入か…実質賃金22カ月連続減で“失われる70万円”の深刻度
東証「圧力」が労働分配率低下を後押し
今後の日本経済を左右する賃上げに水を差しているのが、実は日経平均4万円を突破した空前の株高である。
バブル期を超える史上最高値を更新した要因のひとつが、東京証券取引所の「圧力」だ。昨年の春以来、全上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」を迫った結果、増配を実施する企業が急増。株主還元強化を好感し、外国人勢の旺盛な「買い」を呼び込んだ。
しかし、企業が稼ぎを配当に回す分、割を食うのは従業員の賃金である。株主最優先で従業員にはちっとも還元されず、稼ぎを人件費に回す割合を示す「労働分配率」は驚きの低空飛行が続く。財務省が4日に発表した昨年10~12月期の法人企業統計をもとに試算すると、大企業(資本金10億円以上)の分配率は38.8%と、この50年で最低水準に落ち込んだままだ。
「ここ数年は『モノ言う株主』であるアクティビストファンドが跋扈し、日本の大企業はますます株主最優先の経営が目立つ。常に株主の顔だけを見て、収益改善で株価上昇につながるからと『値上げ』には積極的なのに、従業員の顔は見ず『賃上げ』には消極的です。バブル期超えの株高は従業員の犠牲の上に成り立っています」(金融ジャーナリスト・森岡英樹氏)
現状は日本中が好景気に沸いた平成のバブル期とは大きく異なる。令和の時代は、まさかの「株高バブル不況」に突入しかねない。